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    僕の父は、酒乱だった。”飲まれる”と家具がめちゃくちゃになったとか。母は首を絞められたこともあると言っていたのを僕は記憶している。

    僕の父はまた、躁鬱の持ち主でもあった。元気マックスの時は、気違いみたいに奇声をあげ、いつまでも眠らないんだとか。これが、元気の無い時には、死人より”たちが悪い”というのだから、困ったものだ。

    僕の母は、これらの原因について
    「おそらくは、彼の幼少時の家庭環境に因しているのだろう」
    と見解している。
    物質的な豊かさに富はしたが、一方で家庭的愛情には欠陥があったらしい。


    が、仕事は結構出来る人間だったとの事で(躁鬱になる前の話)、なんだか車のガラスに遮光フィルターを貼ったりするのが主な仕事だったらしい。今、そんなものは機械が担っているのだと思うけど、当時は繊細な職人技だったと聞いている。これがまた、完璧主義の父だったから、自分の納得行くまでは徹底したこだわりを見せ、その仕事振りに惹かれた多くの人が彼のもとに依頼をしたと。中には芸能人みたいな人達もいたんだとか。

    また、繊細な感覚の持ち主だった父には、ちょっとした逸話もあるにはあって、一つ取り上げるならば、高校時代の事。人に知れることなく秘かな趣味として絵を描いていた父は、ある時、学校での絵画コンテストに作品を提出した。この時、その担当であった先生から、提出不可として作品を返された。その理由を聞けば、「誰に描いてもらったんだ?」と、ちょっとその辺の人には描けないくらいのいい出来だったようで、父の自筆とは金輪際信じてもらえなかったとの事。ふふふっ…、笑える。



    この父について、”らしい”という書き方をしたのは、実際の父を僕は知らないのだ。
    母は一人息子である僕を養うために、こんな状況の(躁鬱の)父を追い出したんだとかで、僕の物心の付く頃にはもう既に父の姿は家庭に無かった。もちろん、端っから記憶にも無い父の存在だから、寂しさなどという感情は、少なくとも意識下には、今日に至るまで全く持していない。

    ただ、話に聞く父の肖像が、日常を生きる僕の中の性質や能力とリンクする事が多々あって、
    僕は父の呼吸を自分の呼吸の中に感覚している点に置いて、僕は誰よりも”父を理解(し)っている”と言っていいだろう。


    そんな父を持つ僕だけれども、最近になって漸く認識した事がある。僕はお酒を飲むようになってから、もう7~8年になるが、何を隠そう、僕も酒乱の性質を持っていたんだという事。僕も”飲まれた”時に、周りの”物”に対して暴力性を持つという事。これが”人”でないのが唯一の救い。

    何故今迄気付かなかったのだろう。考えてみれば、僕は酒の席で多くの大切なものを失ってきた。

    そして、それを気付かせてくれたのは、今傍にいてくれる友だった……。


    次号へ続く・・・。




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