俺の七五三は大変だったらしい。
男の子にお決まりの袴を着る段階になって、なんせ頑なに拒んだとの事。
兎に角、嫌だ!着ない!の一点張りだったそうで、当日の予定は狂うわ、母は疲れ切るわ、親戚は呆れるわ、手に負えるガキではなかったと。
しかし、あの手この手を使い、それでもまだ首を横に振る俺に、
「お願い。ホントにホントにちょっとだけ。すぐ終わるから。そしたら、またいっぱい遊ぼう。ねっ?ねっ?」
って事で、嫌々ながらも、なんとか着てはみたんだな。
そして、どれだけ不細工な恰好をしているのかと、すぐさま鏡に自分を映してみた俺は…。
なんと自分の袴姿に惚れちまったんだな。
いっや、今度は撮影どころではないわ、やっと終えた撮影後も袴を脱がないわ、「持って帰る!」の一点張りだわで、またもや周りは俺に振り回されるんだな。
笑っちまうよな。
単純なんだな。
俺は週3~5でジムに通っているが、トレーニングを初めて三年間、一口たりともプロテインというものを飲んだ事が無かった。元々健康には馬鹿みたいに気を使っていて、添加物が大っ嫌いだったからだ。
周りには、
「お前あと一回り体のサイズがでかくなったらめちゃくちゃカッコいいぞ!プロテイン飲んでみって。」
などと言われ続けながらも、やはり頑なに拒み続けた。
ところがだ、
ある、お慕いしている年上の女性が、ある時プロテイン――豆乳リッチミルクの残りを
「はい、あとあげる!」
って言って、全部俺にくれたんだな。
ははっ。
そうして、その母性のようなものに触れて安心した俺は、今度は自宅にまでその豆乳リッチミルクを常備する始末で、…。
やはり単純なんだな。
笑えるな。
でも、俺達人間は、自分が思っている以上に自分の狭い価値観の中に呼吸していて、そこを解き放して一歩違う世界に乗り出してみると、そこには存外に面白いものが眠っていたりする。
先日も、俺のダチが、
「俺、ピアスだけは絶対にしねェ~」
なんて言っていたけど、俺自身も、まさか自分がピアスをはめるとは思ってもみなかった。
まぁ、何が言いたいって、
人間一人辺りの触れて来た価値観なんてものは、本当に高が知れている。
ま、それで全然心地よく生きていけるから、別にそこを敢えて打ち破って価値観を広げる必要もないが、
それでも、より広い世界を目指して”まさか、有り得ない”世界に踏み込んでみる事で、器がデカくなるし、楽しみも増えると俺はそう思って人生を楽しんでる。
まだまだ俺もちっちぇ~世界から抜け出せてない。
明日はもっと広い世界に出て行きたいと思っている。
人生もっと楽しんでみようぜ!
今は誰しもが、己を切り開いて楽しめる時代だぜ!