一成は、今まで数度に亘って、時間短縮の必要を訴えて来た。
しかしながら、斯く言う一成、ついこの間まで”Suica”の何たるかが皆目見当付かなかった。・・・・・。
―――・―――・―――
先日、大学生数人と一緒に、とある遠方に遊びに出掛けた。
集合場所に集まり、
「うぃーっす!!」
なんて言って皆テンションも高く、いつものように和気あいあいだった。
そうして並び並びの徒歩が暫く続き、とある駅の改札口に差し掛かった時だ――衝撃の事件が起きたのは。
先刻までの勢いのまま、一成は当然の如くチケット売り場に足を向けた。
そうして、そこで友に話しかけると、返事が無い。おや?と思って何気なく隣を見ると、友人達の姿が無い。
「あれっ!?」
と思って、見ると、皆既に改札を越えて中にいるじゃないか!
数十秒後、一成は、仲間のところに急ぎ足で近づき、次のように言葉を発した。
「あれ、皆いつの間に切符買ったの?」
すると、仲間の内の一人が、無言で一成に見せた――それが、天下に名高い、あの”Suica”だった。
どうやらヤツらは、そのカードをどうにかこうにか使って、アンフェアプレイを犯したみたいだ。
追い打ちをかけるように、仲間の内の別の奴がこう言った。
「ねェ、一成さんって、いつの時代の人なの?」
「!!!!!」
………….
ちきしょう、このヤロ、と思って一成もその”スイカ”とやらを購入してやった。
………….
今では一成、まんまとSuica愛用者である。
いつでも、どこでも、Suica。
暇さえあれば、Suica。
もはや恋人のような、Suica。
愛しているといっても、過言ではない、Suica。
寝る時も、枕元の、Suica。
Suicaがあれば、世界は皆平和だと思う。
一成は、Suicaで世界が救えると、マジで思っている。
そのくらい、Suicaは一成を変えてしまった。
もう、あの「ピピっ!」という音がたまらない。
瞬間、ゾクッ!っとする。
喧嘩している二人でも、あの音を聞けばすぐ仲直りである。間違いない。
一成は、Suicaを使う度に一人、にやけている。都心のど真ん中で一人、にやけている。
もはや恋人以上である。
――・――・――
そう、話は変わるけれども、”米津玄師”なるものを教えてくれたのも大学生だ。
大学生は多くを知っている。
大学生に学ぶ事は多い。
今日の話は、まぁ、ふざけた話だったが、ちょっと真面目な話、本当に色んな事を彼らは教えてくれる。
今回の例え話では全然ないけれど、
他人の何気ない一言が、自分の人生を大きく変えたりするよね。
これ、マジで紙一重の趣があって、ある意味畏ろしい。
今までの一成の人生に置いて、多くの人の何気ない一言が、彼を大きく変えて来た。
そういえば、昔の海外のとある文筆家が言っていた。
「人にどんどん会いなさい。人と会わないでいると我々は下品になる。」
職場でもいい、バイト先でもいい、ネットで繋がった人間でもいい、
時間の許す限り、人にはどんどん会った方がいい。
自分の可能性が広がる。