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    僕は、以前、ラブホテルという、人類共通の楽園に三年ほど務めていた経験がある。
    お金を稼ぐという事を何も知らない時期に、ひょんなキッカケから飛び込んだ職場だ。

     
     
    そこの社長という人がまた一風変わった方だったのだが、僕はこの人から色んなものを学んだ。
     
     
     
    ホテルは、都内から車で2時間くらいの場所にあった。僕は、そこの深夜の時間帯に配属されたのだった。
     

    社長は、普段は都内に住んでいて、月二度程その楽園(?)に姿を見せる。
    それは、スタッフやホテルを取り締まるというよりは、単に集金にだけ現れるといったラフな感じだった(ーーと言ったら怒られるか!?)。
    そして、そんな日には大抵僕のトコに電話がかかってきて、

    「おぃ、茶坊主!(←社長は何故かいつも僕をこう呼んだ)
    今○○にいるから直ぐに来い!」

    なんて有無を言わせず言い残して、そのまま電話を切ってしまうのだった。
    しかも、僕の出勤する3〜4時間前に!

    そして、今度は一体どんな処なのかと、好奇心の塊で僕は言われた場所(←大抵飲み屋だった。しかも、毎回なんか怪しげな店だった。苦笑。)に突入するのだった。
    すると、社長は毎回決まって、

    「おーぃ、おまえ遅ぇーよ。」

    と薄暗がりの中から僕を手招きして、そのまま僕の分のハイボールを注文してくれるのだった。これから出勤して一人で深夜帯を切り盛りしなければならないのに、そんなのは御構い無しである。

    社長「なぁー、A子ちゃん、聞いてくれよー。こいつまだ童貞だってよー」

    A子「えー!!うそぉー!?
    えー、じゃー、私が少し可愛がってあげるぅ。

    ねぇ、でも一体どんな子がタイプなのぉー?」

    一成「いっや、特に〜。」

    なんて言いながらも一成、既にデレデレである。苦笑。男はこういうところで恋を覚えるんだなー。

    その店の壁に掛かっている、薄暗がりの中ながらもその美しさが充分に見て取れる一枚の写真があった。随分古い写真なのかもしれない。手入れされた長い赤髪に、優しく笑った八方美人は、聞けば、今目の前のカウンターにいるママだと言う。その一枚の写真が、その店にやんわりとした哀愁を漂わせていた。このお店にも、多くの物語が刻まれてきたのだろうと、僕は思うともなく思っては、また手持ち無沙汰にハイボールを口に注ぐのだった。

    ーーー

    「一成君、またいつでもおいでね」

    なんて言われて、それから随分時間も経つなー。
    たまに顔だけでも出してみるかなー。社長もいよるのかな!?

    まぁ、この社長には説教ばかり受けたが(苦笑)、それでも僕の知らない処によく連れ出してくれた。

    そう、ある時こんなこともあった。
    社長のクラウンに二人で乗りながら取り留めもない話をしていると、何を思ったのか、社長は突如車を止めて、

    「よし!あれだ!行って来い!」

    なんて言い出して、通りを歩くスレンダーな女性を指差すと、一瞬間の状況が飲み込めない僕に向かって、ナンパをするのだと言いくるめた。口説けたらお前を見直してやる、という。
    そんな事を言って、その実、自分が楽しんでいるのだった。僕を使って自分が楽しんでいるのに違いないのだった。その証拠に、必死こいて女性に話かけてる僕を車の中から腹を抱えて笑い転げているのだから。
    ザマァ〜ねぇー。
    笑。

    ある時、二人で酔っ払った勢いでマジな喧嘩をした事もあった。
    なんだかんだ社長の事は好いていた僕だから、そんな僕をマジで笑うような事があったら許さないぞ、というような怒り方だったように記憶している。そんな僕をあの時あのバーに居合わせた男達三人がかりが僕の止めに入ったっけ。

    まぁ、喧嘩の内容は大した事じゃない。単なる男同士のコミュニケーションだ。

    ーーー

    僕がそのホテルを辞めて以来、その社長とは会ってないが、それから何度か電話での遣り取りを交わした。
    よく可愛がってくれたっけ。

    まぁ、まだ他にも社長との話はあるので、またその内書いていこうと思う。

    そして、何より、あのラブホテルで起きた数々の思い出話に題を借りれば、めちゃくちゃ面白い話が出来るんじゃないか、と思って、いや、それはまた次週に預けよう。
    ーー読者の方々の空き時間の余興になれば幸いだが、まぁ、あまり期待もせずに待って頂けたら、僕の気持ちも安らぐ。

     
     
     
     
     


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