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    その日僕は、オーストラリアの友人に会う為、自宅から約2時間の道程を鈍行列車に揺られていた。
    列車の中で、溜まっていたLineやメールなどの雑務を済ませ、いつも通り携帯している書物を取り出した。
    僕のバックにはこのようにいつでも書物が入っている。それは、いつ何時に置いても、手持ち無沙汰になる事を徹底して恐れる性質が僕にはあるからである。

    しかしながら、その日の僕は気持ち半分書物、もう半分はこれから起こる事への僅かな心配というどっち付かずな状態であった。

    というのも、これから会う友人というのが全く日本語を話さないからである。同じくして僕もまた英語を皆目解さない人間である。勿論、通訳者などは用意してるはずもなかった。故、今日という1日を言葉の通じない人達と無事過ごす事が出来るのだろうか、という心配がやんわりとあったのである。

    「まぁ、その場になれば何とかなるだろう!」

    という、いつもの勢いで僕は心配ながらも躊躇う事なく約束の場所へと向かった。


    列車の外には見慣れた景色が宛ても無く流れていく。
    僕は何度一人でこの景色を眺めて来たろう、
    どれ程の時間を一人歩いては考え、振り返っては戸惑い、希望と不安とに自分を見つめて来たのだろう、
    と思うとも無く思っては、また膝の上の書物に意識を戻した。
    列車は相も変わらず、ゆっくりと目的地へと進んで行く。


    その内、列車はお決まりのアナウンスを流し、ゆっくりと停車駅に止まった。

    期待とも不安とも付かぬ面持ちのまま改札を抜けると、僕はすかさず先方にWhat’sAppからメッセージを入れた。


    遡る事数十分前、予め到着予定時刻を告げると僕らは同じ列車に乗っている事が分かった。
    そのため、到着後の一報に関しては直ぐにでも返信が来るものと疑ってなかった。

    しかしながら、返信は来なかった。

    「あれっ!?」

    と思いつつも、まぁ、人盛りが多いがその内ひょこんと姿でも見せるのだろう、と周りに注意を払いながらその場で待つことにした。


    もうそろそろ10分くらいになるか。
    おかしいな。

    そう思った僕は、今いる場所を写真に写し、もう一度What’sAppから写真にて居場所を伝えた。

    そのメッセージにも応答がない。


    愈々すっぽかされたのかと、失礼なネガティブワードが頭に去来して来た。
    言葉が通じない事を始め、相手も相手なりに気を張っているのかも知れない、とも考えた。

    改札に到着する事30分程が経ち、愈々今日の予定変更プランも考え始めた。


    近々会いに行くと言って、ついに会えずじまいであった別の友人に会いに行けるかな。忙しい人だから当日の連絡ではダメか知らん。なんて事を考えていたその時、例の待ち合わせの友人から電話がかかって来た。


    「おー!来た来た!!」

    と思い直ぐに応答したが、

    ………

    まったく何を言っているのだか分からない。
    まぁ、「何処何処へ来てくれ」と言っているニュアンスだけは伝わって来た。


    はて、愈々困ったぞ、と思いながらも僕は拙い英語に必死にジェスチャーを加えた。
    いやいや、いくら身振りを加えたって、電話越しの相手にゃ伝わりゃしねーよ!笑。おまえやっぱりバカだったのか!笑。

    結局何を言ってるんだか分からずじまいのまま一度電話を切った。

    はて、電話を切ってしまったけど、どうしたものか。僕は何処へ向かえばいい?取り敢えずここに居ては会えんのだな、と思い直した。

    が、落ち着いて電話での先方の言葉を思い返してみると「階段の上、階段の上!」と、何度も同じワードを言っていたな。


    「あぁ、そうか、階段の上か!」

    僕は、合点がいったわけではないのだが、取り敢えず分かったような振りをして我が物顔で歩き始めた。もう兎に角歩くだけ歩こう。


    ーーー

    ふふっ。人はどうにも思案に暮れた時には、思い切って何も考えずに歩きだしてみるといいのかもしれない。

    ーーー


    何も考えずに歩いたのだが、間も無くするといつの間にか階段に差し掛かっていた。僕はそれを二、三段登り始めてから、

     
    「あれっ、階段ってこれか!」
     
    と漸く先刻の電話越しの話の内容がピンと来た。
     
    そうこうして、地下の改札からやっと外の光を全身に浴びようとした時、懐かしい二人の友人の顔がそこにはあった。
     
    僕をずっと待っていてくれてたようだ。
     
    二人は僕を笑顔で迎えてくれた。
     
     
    ーーー
     
    次回へ続く。
     
     
     


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